先日、月に2回臨床指導に通っているクリニックで股関節の関節唇損傷後手術を受けられた方を診る機会がありました。
術後、結構な日数が経ち、「もう、体重を全部かけてもいいはずだよな」と思われる方でしたが、「体重をかけると痛みがでるので、怖くて体重をかけられない」とのこと。
医師からはどのように状態を説明され、どのような指示が出ているかを確認しました。
ちなみに、関節唇についての動画がフェイスブックで公開されていましたので、Will Laboのページに貼り付けています。(https://www.facebook.com/rehabiitationstudiowilllabo/)
興味のある方はご覧下さい。(本物なので、人によってはグロい画像です。ご注意ください。)
受傷の経過、手術の箇所、医師からの指示を確認。医師からは、「痛みがなくなったら全体重かけても大丈夫」と言われているとのことでした。
つまり、手術の経過は良好で既に体重をかけてもいい状態だが痛いのなら無理しない方が良い、という医師の判断だと思われました。
ではなおさら、痛みがなぜ起こっているかを確認する必要があります。
そこで、実際にどんな風に体重をかけると痛みが出るのかを見てみました。
すると、手術を受けた側に体重を移そうとすると、体重を受けてくれなくてはいけない筋肉が働いていないじゃありませんか!
これでは、他の筋肉がメインの筋肉の代役をすることで、関連痛が起こっても不思議はないな、と思われる所見でした。
そこで、「怖い」と訴える関節の動きの方向にゆっくりとした運動を誘導し、徐々に「怖くない」範囲を増やした上で、正常に筋肉が働くような体重移動の方法を促してみました。
狙いは的中。正常に筋肉が働くと痛みは全く出ません。もちろん、「怖い」感覚はまだ残っていましたが、「正しい、筋肉の働かせ方」の自主トレを教示すると「少しずつ良くなりそうな感じがします。」とおっしゃっていただきました。
ご本人は、「手術の跡が痛むのだろう。このまま治らなかったらどうしよう。仕事に早く戻らなければいけないのに。」と、どんどん悪い方に考え方が進んでしまい「怖さ」から「不安感」になりさらに痛みを助長することにつながっていたように思えました。
一番の問題は、手術後のリハビリで「きちんと筋肉を働かせる動作」の指導を受けていなかったことだと思われます。
痛みの要因は、何も「損傷された関節唇」からだけでも「縫合した後の傷口」からだけでもありません。
筋肉の使い方がうまくいかないと、他の筋肉が代償するおかげで余計な力が入りすぎてしまい痛みを生じる場合もあるということを念頭に置くと、今、痛みを抱えて困っている方々のなかにも、「上手に筋肉が使えたら痛みがなくなる」方だってきっといるはず。
そんなことを考えさせてくれたケースの治療経験でした。